新着論文: トレッキングポールの使用が環境に与える影響

助教のWangさんの筆頭論文(当グループの元構成員である名誉教授の渡辺さんが共著)が、Environmental Challenges誌に掲載されました。ネパールヒマラヤ地域のサガルマータ(エベレスト)国立公園におけるトレッキングポールの使用と登山道の荒廃の関係に焦点を当てた学術論文です。

Wang T., Watanabe T. The use of trekking poles and trail degradation in Sagarmatha National Park, Nepal Himalaya, Environmental Challenges, 20, 101302. https://doi.org/10.1016/j.envc.2025.101302

トレッキングポールの普及が進むにつれ、登山道の侵食に関連する環境への悪影響が懸念されています。特に、キャップなしの金属製の先端が露出しているポールの使用は、登山道表面からの土壌流失を加速させる要因となり得るものと見なされています。

本研究では、2022、2023、2024年のポストモンスーンシーズンを中心に現地調査を行い、視認方法とラプスカメラで撮影した写真によるモニタリング手法を併用し、メイン登山ルートを通行した登山者のトレッキングポール使用状況(ポールの所持状況:あり・なし、ポール先端のキャップ:あり・なし)を記録しました。人気の高い登山道区間を対象に、スマートフォンベースの3Dスキャニング調査を行い、トレッキングポールが登山道の荒廃に及ぼす影響の定量化分析を試み、その調査手法の実用性を検証しました。

調査の結果、登山者の53.6%がトレッキングポールを使用していて、ポール使用者のうち約59.2%がキャップなしのポールを使用していることが明らかになりました。キャップなしのポールは登山道表面に多数の小さな穴(直径0.7 ~3.9 cm)を生じさせ、ポストモンスーンシーズンに地盤が緩んだ状態では土壌侵食を促進する要因となっています。さらに、キャップなしポールの影響により、登山道周辺の植生分布も顕著に変わっていることが明らかになりました。

これらの影響を軽減するためには、登山者やガイドに対し、キャップ付きポールの使用を推奨することが有効だと考えております。また、調査対象区間では利用が集中していることと急勾配(Trail Grade >40%)な斜面に登山道が設置されていることも、当該区間の荒廃リスクが高いことを示しています。国立公園管理者には、調査対象区間の登山道の移設といった積極的な管理措置の検討が必要です。加えて、ポール使用率やキャップの有無の監視は、効果的な登山道管理に役立ちます。本研究の知見は、ヒマラヤ地域をはじめとする各地における登山道管理手法の改善に資するものであり、利用の増加に伴う環境面でのニーズ、自然・文化保護のバランスを図る上で有益です。