学術研究員Daniel Newmanさんと早川の共著論文が、Geomorphology誌(JIF(2024)=3.3, CiteScore(2024)=6.4)に掲載されました。
Newman, D.R., Hayakawa, Y.S. (2026.05) Characterizing local land-surface dynamics with spatio-temporal surface models and robust adaptive Kalman filters. Geomorphology, 500, 110244. https://doi.org/10.1016/j.geomorph.2026.110244
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https://authors.elsevier.com/c/1mgHP,3sl46h3h
2018年北海道胆振東部地震では、厚真町など広範囲で斜面崩壊が引き起こされました。これらの崩壊跡地では、現在も侵食や土砂移動が続いており、地形が刻々と変化しています。
従来の地形変化検出(DoD)は2時期の高度データの差分を取る手法が一般的ですが、測量誤差が累積し、微小な変化がノイズに埋もれてしまうという大きな課題がありました。本研究では、この課題を解決し、高さの上下変化だけではない、地形の変化を精密に抽出する新しい手法を開発しました。
元になった手法は、こちらで紹介しています。
本研究の目的は、不確実性(誤差)を考慮しながら、地形の幾何学的な変化(勾配や曲率の変化)を定量化することです。データには、2021年から2023年にかけて計7回実施した、UAS-Lidarによる地形データを用いました。これの各グリッドセルに、「2次元ロバスト適応型カルマンフィルタ」を適用し、高さの上下変化だけでなく、勾配や曲率の「変化率」を同時に推定する時空間モデルを構築しました。推定された変化を不確実性に基づいて確率的に重み付けすることでノイズが低減され、単純な差分法と比較して信号対雑音比(S/N比)が大幅に向上し、信頼性の高い変化のみを抽出できました。
この新しい手法による解析の結果、従来の差分法では判別が困難だった詳細な地形ダイナミクスが明らかになりました。たとえば、北向き斜面でより活発な侵食が発生しているという非対称性が確認され、この地域特有の凍結融解サイクルに伴う土砂移動(ソリフラクション等)の影響が示唆されます。また、ガリーの頭部が上流側へ後退していく様子や、ガリー内部での複雑な侵食・堆積パターンを幾何学的に定量化することに成功しました。
本研究で開発された手法は、単なる土砂量の計算にとどまらず、「地形がどのように変形しているか」というプロセスの理解を深めるものです。今後は、この幾何学的な情報を土砂流出モデルと統合したり、異なる空間スケールでの解析に応用したりすることで、より高度な土砂災害予測や環境復元モニタリングへの貢献が期待されます。



