博士研究員Lukeman Adamsさんの筆頭論文が、Remote Sensing誌(MDPI)(JIF(2024)=4.1, CiteScore(2024)=8.6)に掲載されました。衛星データと機械学習とを組み合わせ、人間活動による撹乱を考慮した上で森林の炭素蓄積量を推定し、その有効性を検証した研究です。
Adams, L.B., Hayakawa, Y.S. (2026.03) Evaluating disturbance regime stratification for aboveground biomass estimation in a heterogeneous forest landscape: Insights from the Atewa Landscape, Ghana. Remote Sensing, 18 (5), 765. https://doi.org/10.3390/rs18050765
ガーナの生物多様性豊かなアテワ山地森林保護区では、農業・違法採掘・道路建設などの人間活動が森林を侵食しているのが問題になっています。本研究では、NASAによる衛星LIDAR(GEDI)が取得した地上部炭素量(バイオマス)のデータをもとに、光学衛星(Landsat 8)やSAR(ALOS/PALSAR 2)、地形データなどを組み合わせて森林全体のバイオマスを推定しました。
特徴的なのは、推定モデルを構築する際に、「保護区内(比較的保全状態が良好)」と「保護区外(採掘・農業などが活発)」という撹乱の違いによる層別化の効果を検証した点です。一般に、森林タイプの層別化は推定精度を向上させると言われていますが、本研究の結果はそれとは異なる傾向を示しました。
すなわち、保護区内だけ・保護区外だけの局所モデルはいずれも精度が相対的に低く、一方で保護区全体を一括して扱うグローバルモデルの方が高い精度を達成しました。保護区内は高密度の樹冠によるスペクトル飽和が精度の限界となること、また、保護区外は撹乱の種類が多様で、過剰な不均一性がノイズとなること、それぞれが局所モデルに影響したと考えられます。一方、撹乱に関連する変数(採掘地・道路・集落からの距離)は、予測精度への直接的な寄与は小さいものの、モデルの誤差分布を安定させる補完的な役割を果たすことも示されました。
この研究により、人為的な撹乱が激しい熱帯林においては、撹乱の種類だけで層別化するよりも、保護・非保護の対比的な状態を丸ごと含むグローバルモデルの方が有効であることを示しています。



