新着論文:バングラデシュ北東部における突発洪水の起こりやすさをツリー系アンサンブルモデルで評価

冠水した低平地に、盛り土の上の集落が島のように点在し、小舟が浮かぶハオール地帯のイメージ図
(ハオール盆地の洪水の様子をイラスト化したものです。本研究の内容等を必ずしも正確に表すものではありません。)

Md. Najmul Kabirさん(D2)と早川が共著者として参加した論文が、Spatial Information Research誌に掲載されました。バングラデシュ北東部のハオール(Haor)盆地を対象に、ランダムフォレストとXGBoostというツリー系の機械学習モデルを用いて、突発洪水の起こりやすさをマッピングした研究です。

Mostafa, Z. I., Islam, M. M., Biswas, S., Kabir, M. N., Hayakawa, Y. S., Ali, M. Y., Islam, M. A., & Terao, T. (2026.10) Flash flood susceptibility mapping in the northeastern haor basin of Bangladesh using tree-based ensemble models. Spatial Information Research, 34, 66. https://doi.org/10.1007/s41324-026-00715-7

ハオールは、お椀状の低平地が河川や水路でつながった、季節的に冠水する湿地帯です。モンスーン前の降雨や上流からの流出によって水位が急激に上がると、農地・集落・交通網・生計に大きな被害が出ます。一方で、ハオール地域のような低平な湿地を細かい空間スケールで評価した研究は限られており、従来の階層分析法(AHP)や頻度比(FR)、ロジスティック回帰では、要因どうしの非線形な関係を捉えにくいという課題がありました。

本研究では、キショレゴンジ県のハオール地帯にある5つの地域(ウパジラ)を対象に、Sentinel-1のSAR画像から作成した洪水履歴(2017〜2022年)と、降雨・流量・水位・標高・NDVI・土地利用など12の環境要因を、200 mのグリッドで統合しました。ランダムフォレスト、XGBoost、そして両者の確率を平均したアンサンブルの3つを比較した結果、いずれもAUC・正解率とも高い精度を示し、モデル間に統計的な有意差はありませんでした。空間的な自己相関による過大評価を避けるため、空間ブロック交差検証も併用しています。要因の重要度では、NDVI、流量、標高、SPI(標準化降水指数)、土地利用が大きな情報を持つことが示されました。

洪水の起こりやすさのマップでは、調査地域の約40%が「高」または「非常に高」と判定され、とくに北部で高く、南部では低いという明瞭な地域差が見られました。これらは、堤防の整備、避難用の高台、耐水性のある交通網、早期警報、作期の調整といった、地域ごとの対策の優先順位づけに役立つ情報です。ただし、本研究のマップは「洪水の起こりやすさ」を示すもので、被害の大きさや脆弱性を含む「リスク」そのものではありません。今後は、降雨イベントごとの時系列データやSARの継続観測を取り入れ、予測への発展が期待されます。